毎年、防大の門を叩いて入ってくる学生は500人くらいいます。
僕らの期も500人くらい入校したのですが、
確か卒業時には450人くらいになっていたかと思います。
一般大学だと考えられないような数字かと思いますが、
防大は途中で辞めていく学生が非常に多い大学です。
では「いつ辞めていくのか?」ですが、実は大半が入校前。
皆さん「入校前ってどういうこと???」と思われたのでは無いでしょうか?
実は防大には入校式のまえに、
防大生になるための準備をする期間があります。
親元を離れて防大の門をくぐったら「着校」。
この時点ではまだ正式な学生ではありません。
「着校」から1週間くらい防大生になるための準備期間があり、
その後「入校式」があります。
「入校式」が終わるとこれで晴れて防大生となるのですが、
この1週間くらいの間に辞める学生が非常に多いのです。
辞めていく理由は様々で、ホームシックになったり、
初めて経験する寮での生活になじめなかったりなどなど。
余談ですが、防大側も「1割くらいは辞めるだろう」と予測して、
毎年多めに入校させているとか。。。
ちなみに、入校式までは正式な防大生ではないので、
「○○くん」や「○○してください」などと言われて、
先輩も非常に優しく接してくれます。
ところが入校式が終わると環境が激変します。
優しかった先輩達の言葉も変わり、
呼ばれ方も「松本!」になり罵声が飛び交う生活が始まります。。。
実は私自身も何度か辞めようと思ったことがあります。
今までの自由な生活ががらっと変わり、ルールでガチガチの毎日。
入校後の2週間くらいはそれまで経験したことが無いくらい忙しい毎日で、
食事をしっかり食べる時間もお風呂にゆっくり入る時間もありません。
当時は携帯電話もなかったため、
大学内にある公衆電話からしか電話がかけられなかったのですが、
入稿後2週間経ってようやく見つけた時間を利用して親に電話しました。
久しぶりに親の声を聞くと、ふ~っと全身から力が抜けていき、
ただただ涙が出て止まりませんでした。
多くの人間が次々と辞めていくなかで、
「なぜ自分は辞めなかったのか」と今でも思うことがあります。
1つ目は同期がいたからです。
防大は全寮制ですので、いつどこにいても同期がいます。
「あれ、つらいよな」「しんどいよね」と言い合えるだけでストレス解消になります。
今振り返ってみると、後ろ向きな話を共有できる仲間がいたことはありがたかった。
痛みを分かち合える仲間がいることで、
「自分だけではない」「みんなつらいんだ」という意識が芽生えました。
2つ目は、前にも書きましたが、対番制度です。
同期が痛みを分かち合える存在だとすると、
1期上の対番は「痛みを和らげてくれる」存在です。
消灯後から24時くらいまで、毎晩私達1年生の部屋に夜話に来てくれました。
話の内容はあまり覚えていないのですが、
「いや~俺もこの時期つらくてさ。でもこういう風に考えたら乗り越えられたよ」という経験談や、
「次のこのイベントまでやり終えたら自信がつくよ」という話を聞くと、
何となく乗り越えられそうな気になりました。
「全寮制」というシステムに支えられて、
人と人を横と縦でつなぐ「同期」と「対番」は、
防大の本質であるような気がしています。