防大では、運動会とは別に学年別に競技会が行われます。
1年生は遠泳、2年生はカッター競技会、
3年生は断郊競技会、4年生は持続走といった具合です。
この時期になると、毎年「1年生は遠泳終わったかな?」と思います。
防大には全国いろんなところから学生が集まっていますので、
泳げない人が結構います。
実は私も、大阪の都会の高校だったため学内にプールがなく、
水泳はほとんどやってなかったため、泳げないに等しかったです。
泳げない学生でも、春先の寒い時期から屋内プールで練習を始め、
7月下旬にはほぼ全員が8kmを泳ぎきることが出来ます。
私の記憶では、確か遠泳本番の2週間くらい前にようやく海での訓練に変わりました。
「こんな直前で大丈夫かよ?」という不安が的中したのか、
そのときの海は前を泳ぐ人が波に隠れて見えなくなるくらい非常に荒れていて、
実際に数人がおぼれてしまいました。。。
何があっても大丈夫なように教官が乗った船がついてきていて、
隊列組んで、バディと一緒に泳ぐので、おぼれたら助けあげてもらえます。
この「バディ」というのは安全管理上非常に大事だと知りましたね。
幸い遠泳当日の海は荒れず、穏やかな中始まりました。
訓練の成果もあり、バディを組んだ仲間がいる安心感もあって、
特別な不安もなく無事に泳ぎきることができ、大きな自信につながりました。
遠泳で何がつらいかと言うと、アカクラゲにさされることです。
大抵先頭の人が発見するわけですが、さされるとめちゃめちゃ痛いので、
その時ばかりはアカクラゲを避けようと思わず隊列が乱れてしまいます(笑)
また、4~5時間(たぶんこれくらいだったと思う)ずっと泳ぎ続けるので
途中困ったことがおきます。
一つ目は腹が減ること。
これは海パンの中に朝食で出た蜂蜜やチョコレートをしのばせておき、
途中でなめてしのぎます。
二つ目は「小」をしたくなること。
泳ぎながらするわけですが、言うは易しで実際は非常に難しく、
したいんだけれども出ない、そんな感じでした。
(当然、後ろのやつには言わず用を足します)
そして三つ目は、日焼けでした。
海面に反射する照り返しが顔に当たり、ぬりまくった日焼け止めもほぼ意味がありません。
日焼けで皮がむけるのは誰でも経験があると思いますが、
遠泳のときの日焼けは、水分までとられてしまい、
笑うと皮膚がぴしっと割れるほどでした。
ようやく遠泳が終って浜にあがっても、
ほぼ重力がないところで長時間泳いでいるので、
立ち上がるまでにかなりの時間がかかりました。
実際に教官から「すぐに立ち上がるなよ。倒れるから」と言われ、
四つん這いで浜まであがった記憶があります。
また、浜辺で焚き火にあたりながら
砂糖と寒天をとかしたようなもの(なんて言う飲み物か忘れた)
を飲みましたが、これが非常にうまかった!
入校してからの3~4ヶ月間、
遠泳のためにみっちり訓練しますので体形もずいぶん変わります。
遠泳が終って夏休みに入り実家に帰ると、
親も「立派になったな」とびっくりしていました。
余談ですが、、
私は夏休みに友人と都内某所を歩いていたら、
あまりにも日焼けで黒くなりすぎて外人に間違われました(笑)
嘘のような本当の話ですが、
卒業後もしばらくはおしりに水着の後が残っていました。
初々しくどこか頼りなかった1年生も、
この遠泳を乗り切ることで
「やればできるじゃん」と自信をもち、
立派な防大生になる一歩を踏み出すのです。