IT企業の社長が防衛大学校卒というのは珍しいようで、
始めてお会いするお客さんには、
まず間違いなく防衛大学校のことを聞かれます。

 

「防大って、卒業式で帽子投げるんでしょ?」
「実弾撃ったことある?」 等等…。

 

私自身防衛大学校時代に学んだことが
今の人生にかなり生きていると感じていますので、

 

少しでも皆さんの参考になるような記事を
軍事機密に抵触しない程度に書ければ、と思っています。

 

初回は防衛大学校がどういうところなのか、予備知識編です。

 

●国際色豊か、厳しい連帯責任…防大生の日常

 

防衛大学校の生徒は1学年400人ほど。

 

内1割が留学生です。
タイ人、シンガポール人などと混ざって寮生活を過ごしますので、
外国人留学生は特に珍しい存在ではありません。

 

以外に思われるかもしれませんが、実は国際色豊かな大学なのです。

 

防衛大学校は全寮制です。
自宅から通う生徒はいません。

 

全寮制で学ぶことは、まず身の回りの世話です。

 

今まで家事を全くやったことのない学生でも、
2~3週間で洗濯・掃除・アイロンがけができるようになります。

 

他に特徴的なのは「連帯責任」です。

 

例えば門限以前に帰ってこなかった場合。

 

当事者がしばかれ、丸坊主の上、
背嚢をしょって運動場を走り回るのはいいとして、
同じ隊のメンバーも一緒に走ることになります。

 

そういうことが繰り返されると、「ルールを守るべきだから」ではなく、
「仲間に申し訳ないから」という理由でルールを守るようになっていきます。

 

●防衛大学校の組織構成

 

 

大学内は、複数の「部隊」に分かれています。

 

全体を束ねるのが「学生隊」、
その下に「大隊」「中隊」「小隊」「部屋(寮の部屋のこと)」と続きます。

 

陸自・海自・空自別に分かれているわけではなく、
あえて混ざるようになっています。

 

「隊」には必ずそれぞれの「学生長」がいます。
「大隊学生長」・「中隊学生長」・「小隊学生長」、「部屋」にも「部屋長」がいます。

 

「隊長」は指名制で決定されます。
非常に多くの「長」が存在することになりますが、
これには「だれでもリーダーの経験ができる」というメリットがあります。

 

隊長になるチャンスは多いですし、
後述するイベントでも各委員長が設定されます。

 

誰もが将来にリーダーになれるわけではありませんが、
全員がここでリーダーの経験を積むことで、
意見の取りまとめや意思決定、実行など「リーダーの苦労」を知ることは、
組織運営上大きなプラスになります。

 

また、階層構造で組織ががっちり固まっているので動きが遅そうに見えますが、実は逆なのです。

 

責任の所在が明確になっているため、意思決定は早いです。
防衛大学校時代を振り返ると、何かを合議で決めた、 という経験はそんなになかったですね。

 

●地元民も楽しみ!防大イベント

 

防衛大学校で有名なのはイベントです。

 

毎年11月、4個(大)隊が戦う「棒倒し」は、横須賀の話題になっているようです。
他にもカッター漕ぎ、水泳大会等のイベントが開催されます。

 

これに優勝すると「棒倒し優勝大隊」等と記された看板が授与され、
学生舎に掲げることができます。
ほぼ名誉のためだけに戦う感じです。

 

小さなご褒美がもらえることもあります。

 

例えば、防衛大学校で起床は6:30、
普通は裸で乾布摩擦をしながら点呼をしないといけないのですが、
優勝した大隊のみ寝たまま点呼ができる「就寝点呼」が1週間ほど認められます。

 

これだけのことですが、寮生にはものすごく嬉しいのです。

 

このように大隊同士で戦うイベントが多いので、
 必然的に大隊同士はライバル意識を持ち、
 大隊の中では強い仲間意識が芽生えます。
 擬似的な敵味方関係を作り出しているんですね。